福島県で自立支援医療費の支給認定において、所得区分の判定で誤りがあり、患者に誤った医療費が給付されていたというニュースがありました。
県は、過大給付分については受給者に請求していくと報告しています。
また、過小給付分については受給者に返還すると報告しています。
感じたことを書いてみます。
目次
◆自立支援医療費誤給付の概要
2022年5月30日のニュースです。
福島県のサイトに記事が出ています。
私はニュースサイトの記事で知ってこちらにたどり着きました。
以下の書き出しで掲載されました。
「自立支援医療費(精神通院医療)の支給認定において、受給者の所得区分判定に誤りがあったため、一部の受給者に対して誤った自己負担上限額が記載された受給者証が交付され、誤った額の自立支援医療費(国1/2、県1/2)が支給されていたことが判明しました。」
これだけだとピンとこないかもしれません。
砕けた言い方をすると、医療費の補助金額が間違っていて、間違ったままで支給してしまったということです。
間違い方には、当然、損得があります。
- 「公費を過大に支給し、本人負担が少ない者 301名(8市町村)」
- 「公費を少なく支給し、本人負担が多い者 9名(2市)」
また、その金額は、
- 過大給付:「受給者への過大給付額 4,847,178円」
- 過小給付:「受給者への返還額 104,880円」
これによると過大給付があったのが、301人で、金額は4,847,178円です。
一人当たり約1万円の過大給付になります。
これに対し次のように対応すると報告しています。
- 「過大給付となった方に対しては、県に返還していただくため協力をお願いしてまいります」
- 「過小給付となった方に対しては、速やかにご本人への返還手続きを進めてまいります」
また、原因については次のように報告しています。
「自立支援医療における医療費の自己負担上限額は、合計所得額に応じて所得区分を決定することになっているが、公的年金等の取り扱い等を誤り、本来の所得区分を別の所得区分へ判定していため」
これも砕けた言い方にすると、所得区分の判定に使う収入の合計に公的年金の金額を入れなかったので収入が少ないほうの限度額になってしまったというところでしょうか。
過小給付となるケースはよくわかりません。
私として気になったのは、この記事の書き出しにある次の文です。
「過大給付となった受給者負担分については、受給者に請求してまいります」
これを見て、今さら請求しなくてもいいのに、そういう訳にはいかないのかなぁと思いました。
間違いは間違いなので正していきます、と、そんなに意地を張らなくてもいいのになぁと思いました。
受給者に寄り添った対応にしてほしいなと思った次第です。
◇福島県の発表のリンク
福島県が発表した記事のリンクをまとめておきます。
◇自立支援医療とは
自立支援医療とはどんなものか、厚生労働省のサイトの説明です。
1 目的 自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
2 対象者 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者 更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上) 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満) 厚生労働省
今回の対象者は、精神通院医療によるものでした。
継続的に精神医療を要する方です。医療費も継続的に発生するからこの制度で軽減していただける訳です。
そのような経済弱者に追い打ちをかけなくてもと思うのが正直な気持ちです。
◆「過大給付額を返還してもらう」の意味
自立支援医療制度は、精神疾患がある人などが医療を受けた時にかかる費用を公費で負担してくれる制度です。
通常は、患者が本来の医療費を医療機関に払って後から給付されるのではなく、医療機関が公費で給付される分の請求を除いて患者に請求します。
なので、患者からすると給付があったというより、医療費の負担が少なくなると認識されていると思います。
医療費の7割は医療保険(健康保険)から支払われます。一般の方は残りの3割を負担します。俗にいう3割の患者負担です。
自立支援医療の対象になると患者負担が1割または負担上限額になります。
医療保険だけの場合に負担する3割分からこの患者負担分を除いた残りを自立支援医療で給付するということになります。
また、負担上限額というのは、1か月の医療費の1割分の患者負担額が限度額を超えた場合、患者には限度額を負担してもらう仕組みです。
例えば、限度額が5000円だった場合、患者負担額が5000円を超える請求はされません。その分給付が増えます。
この負担上限額は、患者が負担している市町村民税(年収)の金額によって変わります。
今回の誤りは、年収の計算に公的年金の金額を加えなかったために負担限度額が本来のものより低くなった人が発生したということです。
つまり、負担上限額が本来、例えば、10000円の人が5000円になってしまっていたということです。
医療費の1割分が7000円だった場合、7000円支払うところ5000円しか払っていないことになります。
差額の2000円を公費が給付していたため「過大給付」と言っています。
「返還」というのは、給付がなければ患者負担になっていた2000円を新たに徴収するということです。
公費からすれば、給付しすぎてしまっていたので返してということなのですが・・・
患者からすれば、今さらあの時の医療費は7000円でしたと言われるようなものです。
◆感じたこと
昔の恨みじゃないけれど、申請しないと給付してくれないのに、多く給付したから返せって、正当だけど、なかなか言えない気がします。
一般の病院で、例えば、「処置の代金を請求し忘れていたから、追加で請求します」と会計の終わった患者さんへ請求するのって、病院は自分の信用もあるのでなかなかできない気がします。
もちろん金額にも依るのでしょうが。
今回の件は、患者に何の落ち度もなくて、役所の一方的なミスでしょう。
自立支援医療費を申請している精神疾患がある方の経済事情をおもんぱかった対応をしてほしいと思います。
一応、「協力をお願いしてまいります」と言っていただいていますが、そんなお願いもしないでいただけたらなぁと思います。
◆会計検査院の決算検査報告書
会計検査院のサイトへ行くと過去の検査報告書を見ることができます。
今回の福島県の事例は報告されていないようなので、会計検査院では見つけられないようなケースだったのでしょう。
他のケースは載っています。
こちら『障害者自立支援給付費負担金が過大に交付されていたもの | 平成21年度決算検査報告 | 会計検査院』は少し古いですが平成21年度の検査報告です。
27の自治体で過大交付(国の立場になると交付なんですね)があったようです。
それ以外にも毎年発生しているようです。
ミスした原因は気になりません。ミスは付きものです。
どう補填したのかが気になります。
患者に負担を求めていないことを祈ります。
それにしてもミスしやすい制度なんじゃないのかな。
◆さいごに
「昔の恨み」なんて書きましたが、遠い昔、2番目の子供が生まれて約1年間、子ども手当(手当の名前は不確かです)を受け取れなかったことがあります。
里帰り出産だったので出生届けを妻の実家のある町に提出しました。
それから約1年後、引っ越しをします。引っ越し先に転入の手続きに行くと、子ども手当を受け取れることを教えてもらいました。それも生まれた時から。
でも、さかのぼって貰うことはできませんでした。
当時、二人目の子供から出た手当だったんだと思います。
一人目の時になかったので、すっかり見落としていました。
自分の不注意ではあるんですけどね。
里帰り先の役場から、居住地の役場へ出生届けを受け取った連絡がいきます。その時に子ども手当について案内していないと連絡をする仕組みになっていれば、こんな思いはしなかったのにと思います。
あるいは里帰り先の役場で、「帰ったら役場へ行って手続してね」と教えてくれれば・・・
ワクチン接種券は何も申請しなくても60歳以上と判断して送ってこれるんだから・・・
これは今の話ですね。🥲